ケアラー支援フォーラム2012
2012年度 ケアラー支援フォーラム
       

ケアラーの暮らしを地域で支える

フォーラム2012プログラム

2012年6月27日(水)、剛堂会館ビル第2会議室にて、2012年度のケアラー支援フォーラムを開催しました。参加者は80名を超え、幅広い方面からのご参加をいただきました。各プログラムのレポートを掲載します。

当日配布した資料をご希望の方は、お問い合わせフォームに「2012年フォーラム資料希望」とご記入のうえご連絡ください。
資料代として、1部につき1000円を頂戴します。




主催者挨拶:堀江紀一(日本ケアラー連盟代表理事)

ケアラー連盟は2010年の6月7日に結成し「ケアラー」という言葉を使いはじめたが、この2年間で「ケアラー」という言葉も普及してきた。最初の年にはケアラーの実態調査を行い、2年目は支援の課題を明らかにするための調査を行ってきた。フォーラムではその結果を報告し、パネラーの方々とケアラー支援のあり方について考えたい。



第1部:調査報告●2011年度ケアラー調査報告と提言
“被災地ケアラーの現状と生活支援の現場から”
被災地ケアラ―調査について: 中村健治氏(北海道社会福祉協議会福祉人材部長、日本ケアラー連盟理事)

2011年3月11日の東日本大震災の半年後から3カ月間に渡って、震災がもたらした介護への影響や介護実態を明らかにするため、岩手県と宮城県で高齢者を介護するケアラーを中心にアンケート調査と面接調査を行った。3人に2人が自宅に被害を受け、避難所や仮設住宅に移ってケアを続けているが、複数回の移動を経験したり、震災で被介護者の状態が悪くなる、サービス利用が困難など、被災直後のケアラーが一般の人以上の困難を抱え、心身の不調や悩みの中にいる実態が明らかになった。孤立感を強く感じている人も被災前の2倍になり、特に「休息をとれる機会」「緊急時のサービス」のニーズが高い。個別に話を聞くと、避難所や親族宅を転々とし住環境が激変する中で家族がバラバラになり、結果的に介護者への負担が増えていることが分かる。ケアラーを対象にした避難訓練を含めた地域防災や応急仮設住宅の課題なども明らかになっているが、被災地のケアラー調査からはみえてくるのは、平常時から積極的なアウトリーチによりケアラーに支援を受ける力(受援力)をつけておくことなど、日常の支援のあり方の重要性である。



千葉県中核地域生活支援センターの訪問調査について:堀越栄子氏(日本女子大学教授、日本ケアラー連盟代表理事)

2010年の実態調査でも被災地調査でも、ケアラー自身が「支援が必要なのに気付いていない」「困っていることがうまく伝えられない」課題が浮き彫りになったことから、その対応を考えるため、「だれでも・いつでも・どこでも」「24時間365日」「ワンストップサービスを提供」する千葉県中核地域生活支援センターに訪問調査を行った。支援のはじまりは誰からのSOSであってもよいし、相談も申請もなくてもセンターから問題を発見して支援に行くこともある。関係機関と連携し、権利擁護の支援から家族や家庭をトータルに捉えて最後まで支援する。取り組む問題は多様で、センターの支援は地域づくりや社会資源をつくることに通じていく。1つのセンターが80~100か所の機関と連携しているが、それらの連携先にセンターについて聞き取り調査を行ったところ評価が高く、今後も連携が望まれていた。ケアラー支援の視点からは、こうしたセンターは不可欠ではあるものの専門的な知識まで求められず、よりケアラー支援に特化した支援機関が必要と思われる。



英国のケアラー支援調査について:松澤明美氏(茨城キリスト教大学講師、日本ケアラー連盟理事)

諸外国のケアラー支援の情報はあるが実践的な支援策について知るため、2011年8月にケアラー支援の先進地である英国を訪問し、ケアラーズセンター、自治体、ケアラー支援団体など8か所を調査した。英国では1995年の理念法や自治体にケアラー・アセスメントを義務付けた法律など、根拠法に基づいて支援が行われている。ケアラー支援を担う全国組織が複数あり、例えば介護者のためのプリンセス・ロイヤル・トラストは、全国的なケアラーズセンターのネットワークの本部として、認定システムを通じてセンターの質を担保している。センターの支援は、必要な情報がまとった「介護者ガイドブック」などの情報提供やヤングケアラーへの支援、緊急時への対応など多様。またケアラーを早期に発見するために医療機関にも積極的に働き掛けていた。そのまま日本に導入できるかどうかは別として、学ぶところが多い。



まとめ:堀越栄子氏

3つの調査から、ケアラー支援策についての提言を6点とりまとめた。

 
  • 1)包括的生活支援の原則
  • 2)訪問・同行相談支援(アウトリーチ活動)と家族(世帯)単位のアセスメント
  • 3)地域に必要なサービスと緊急時に対応できる体制の構築
  • 4)ケアラー支援専門員の養成と教育プログラムの作成
  • 5)地域づくりとしての視点の確立
  • 6)介護者支援推進法(仮称)の制定と自治体の取り組み


第2部:パネルディスカッション●これからのケアラー支援策を考える
“ケアラーの「トータルな生活支援」を考える”

<パネリスト>
羽生正宗氏(山口大学大学院教授)
吉田義人氏(北海道栗山町社会福祉協議会事務局長)
牧野史子氏(NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン理事長、日本ケアラー連盟代表理事)
<コーディネーター>
後藤千恵氏(NHK解説委員)


パネルディスカッションは、パネリストの現在の活動状況等についての報告からはじまった。


パネリスト報告:羽生正宗氏

2011年12月に山口大学でレスパイトをテーマにシンポジウムを行ったので、その成果を取りまとめた資料に基づいて話を進めたい。「レスパイト」という言葉さえ知られていない現状があり、連絡網の寸断も深刻。調査したところ、介護をはじめてほぼ2年でレスパイトに行きついているが、男性が中心となりつつある介護者たちはそれまで周りに迷惑をかけたくないと揺らぐ。そんな痛ましい介護者の現実があるのに、政治には介護へのビジョンがなく道理に合わない消費税の増税が決まっていく。必要なのは法整備と全国モデルをつくることだと考えている。実際に介護者支援に財政出動を行っている秋田県の上小阿仁村(かみこあにむら)の例もある。衆議院議員の河村建夫氏は介護者支援の理念法が必要と考え、その立法化に向けて取り組むとの姿勢を示しておられる。英国でも法整備に先駆けて全国組織ができたことを思い、これから山口で社会福祉協議会と介護施設を繋いで全国モデルをつくっていきたい。



パネリスト報告:吉田義人氏

昨年度作成したケアラー手帳には反響が多く、よいかたちで広がりをみせているが、手帳は単に一つのステップ。次に向け新しいステップがみえてきたところだ。町の実情も家族関係も変化する中、認知症も虐待もモンスター市民も増えてきた。住民が前面に出て行くインフォーマルなサービスがなければ、従来型の福祉制度では問題解決はできない。「福祉臭い」のはダメ。切り口は何でもよいが、これからは社会貢献を促す先行投資型の福祉が必要。栗山町では調査によって介護の過酷な実態を知ったことをきっかけに、命のバトンの配布のほか、主婦ボランティアによる在宅サポーターの制度や「宅配電話町」など新しい取り組みをはじめた。これからの福祉は双方向で発信できることが不可欠で、手帳はそのための工夫の一環。寝たきりの人からも発信できるよう情報インフラを整備していかなければ! これから福祉の副読本や牧野さんのようなケアラーズ・カフェ、老い方のマニュアルなどもつくり、そうした役割を社会福祉協議会として担っていきたい。



パネリスト報告:牧野史子氏

介護者の孤立にアウトリーチ型の支援で取り組もうと2001年にアラジンを立ち上げたが、最近、要介護者だけでなく家族ごと孤立している実態に行政がやっと気づいてきた。男性や若い介護者も増え、従来型の介護者の会では対応できない。そんな多様なニーズに応えようと3か月前に杉並区にケアラーズ・カフェをつくった。駅に近く、さらに目の前には病院がある。一般の方も受け入れており、だんだんと年齢層が広がり男性も来てくれるようになった。ボランティアを含めてスタッフは研修を受け、来られる人ほぼ全員に声をかけている。また終末期のグリーフケアや医療職の話などの講座や、月一度の娘介護者の会、息子介護者の会も好評。地域の啓発にもつながっているのではないか。東京都の地域支え合い体制づくり事業の補助金でつくったので、これから自治体と一緒になってつくりたい人は利用するとよい。今後はカフェのサービスを増やすと同時に、介護者手帳や介護者アセスメントのトライアル、研修プログラムなどの実験事業をここでやって行きながら、ケアラーズセンターとしての機能を担っていきたい。多様な情報が集まっていて介護者と家族会や各種サービスとを繋げる、いわば民間の地域包括センターとしてケアラーズ・カフェを全国に広げていければ……。市民のニーズから生まれる支援を地域でかたちにしていくが、そのランニングコストは自治体が持つべきだろう。



ディスカッション

パネルディスカッション後半では、コーディネーターの後藤千恵氏が「コミュニティ・カフェの広がりは私も取材したこともあるが、やはりキーワードは『地域で』だと思う。困っている人を助けることがひいては地域づくり、社会づくりになるのでは」と前半の発表をとりまとめた上で、そのために具体的に何が必要なのか、と次々にパネラーに質問を投げかけた。それに応えて、吉田氏からは「知恵を絞り行動を起こして、地域の人と一緒にやっていくことが大事」。羽生氏からは「誰のための政策かがブレないこと。希望とビジョンを失わないよう人材を育て、線を面に」。牧野氏からは「必要なのは介護者を受け止める場と人材、生活を支えるちょっとした支援、地域の人材を掘り起こすコーディネーション、自治体と行政の協働」などの発言があった。



介護者支援法制定への呼びかけ:児玉真美氏(日本ケアラー連盟代表理事)

最後に代表理事の一人、児玉真美氏が「重い障害のある子どもを持つ親としての体験から、介護者が助けを求めやすく、介護のために介護者自身の人生や生活を諦めなくてもよい社会を望んできた」と語り、介護者支援法制定に向けて協力要請を呼びかけた。



司会:菅原敏夫(公益社団法人地方自治総合研究所)
レポート:児玉真美(フリーライター、日本ケアラー連盟代表理事)

※無断転載禁止